今回は、乃木坂46『逃げ水』を取り上げる。個人的には2017年の乃木坂46で一番良い。
基本情報
- 作詞:秋元康
- 作曲:谷村庸平
- 編曲:谷村庸平
- BPM:134
- 4分の4拍子
- Ebメジャー
レビュー
基本的にはAbM7、Eb、Bb、Cm7のコードで進行する。転調はJ-Popとしては地味で、Bメロの後半でBbマイナー*1に変わるくらいだ(ドビュッシー『月の光』は平行調のDbメジャー)。また、ほぼ全編にわたり「シbミbファソ」というフレーズが裏で鳴っている。
全体的にゆったりとした定常的な曲調だが(コードもそうだし)、後述するシンセやキック、エレキギターで飽きさせないよう工夫がされている。
ピアノを中心したアレンジとなっているものの、ちゃんとアコースティックギターでビートを刻む私好みの構成だ。うむ、それでよい。
メロディーは、8分を中心とした割とわかりやすいリズム。それでいて48・46系楽曲で頻出の、2拍を3:3:2に割った「ターンターンタン」というリズムも忘れていない。Bメロではご丁寧にキックまで同調させて! ちなみに、2倍の4拍を3:3:2に割ったリズムも登場する。
ピアノによる導入の後、幾分下品な音色のシンセがイントロの後半を担う。しかし、これが歌番組でカットされるとどうも物足りない。この曲の良さが1/3も伝わらないのだ。壊れるほど愛しているかどうかにかかわらず。それはさておき、この現象は曲の構成に抑揚をつけることの重要性を示しているのではないだろうか。
2番ではエレキギターでノリを加えて曲調に変化を加えている。
Dメロは、基本的にはミbの同音連打で構成されている。時折、山のように上がる音形のタイミング、高さ、長さを変えているところがうまいと思う。
ラスサビでは、冒頭の広範に渡る分散和音がゴージャスで好きだ。特に、MVではパッとライティングが明るくなる瞬間で、曲と演出がうまくマッチしていると思う。
以上のように、一定の曲調を保ちながらも様々な工夫により抑揚が付けられている。地味目な曲はパッとしないという人も工夫に耳を傾ければこの曲の良さが感じ取れるのではないだろうか。
私個人としては、メロディーは音程よりリズム派で、この曲でいうとAメロ、Dメロの同音連打が該当する。また、コードのルートに対して2度で重なるのも好きだ(サビ等)。というわけで、2017年どころか乃木坂46の曲全体の中でもお気に入りの曲となっている。
*1:Fが登場することからBbマイナーと判断した