MIDIキーボードでガチ入力したくなったのでCasio デジタルピアノ Privia PX-160BKを綿密な比較の末、購入した。microKEY Air 37鍵モデルでは、タッチは気にならないものの両手で弾くのはまず不可能。仮に鍵数が間に合ってもミニサイズ鍵盤ではきつい。
もうどうせ買うなら88鍵のもの。そして譲れないのはピアノタッチ(鍵盤の重さがアコースティックピアノ相当)。DTM用途にはむしろ余計なのではと思われるかもしれないが、筋肉はすべてを解決する…!
シーケンサーやコントローラー類は私には手に余る。そうなると自ずとターゲットは電子ピアノとなる。調律のいらないピアノにもなるし一石二鳥である。
用途的に音源はおまけみたいなものなので高級機種はいらない。低価格帯ではカシオが良さげなことは前々から聞いていた。各社の最廉価モデルを検討してみた。
比較
机に置いて使うのでアップライト型(足が付いているもの)は除外
実勢価格的にはKorg B1 < Yamaha P-45 < Casio PX-160か。
MIDI OUTもUSB端子もないのでKorg B1は早々に排除いたします by 小池。電子ピアノ目的ならいいものだと思うけど。
かくしてYamaha P-45とCasio PX-160の一騎打ちとなったのだが、これが非常に頭を悩ませることとなる。
ちなみに、セミウェイテッド鍵盤でよいのならこんなのもある。
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Yamaha P-45 vs Casio PX-160
実際に見に行って比較した。両者ともに驚いたのだが、今は電子ピアノでもこのタッチなのである(しかもこの価格で!)。
「いーよ。この重さだよ。」
試奏してタッチを比較したが、どちらも大満足まではいかないがOKだ。個人的にはP-45の方が軽いが本物ライクに感じた。ただ、メーカー戦略上はカシオの方がハイグレードなはずである。上位機種のYamaha P-255は「グレードハンマー(GH)鍵盤象牙調仕上げ」なのに対し、P-45は「グレードハンマースタンダード(GHS)鍵盤黒鍵マット仕上げ」。カシオは下位機種だからといってあまりスペックはケチっていない。
機能
あとは機能面であるが、メーカー戦略や価格もあってか基本的にはPX-160の方が上である。
Yamaha P-45
- グレードハンマースタンダード(GHS)鍵盤黒鍵マット仕上げ
- 音源:AWMステレオサンプリング
- 最大同時発音数64
- 音色数:10
- ヘッドフォン:ステレオ標準
- AUX OUT:No
- アンプ/スピーカー:6W 12cm x2
Casio PX-160
- 3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤Ⅱ(象牙調・黒檀調鍵盤)
- 音源:マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR
- 最大同時発音数128
- 音色数:18
- ヘッドフォン:ステレオミニx2
- AUX OUT:L/MONO、R
- アンプ/スピーカー:8W 12cm x2
Yamahaは音源のスペックを絞ってある。キーオフやダンパーペダルによる音の変化、打鍵や開放による弦の共鳴のサンプリング音を搭載していない。指は10本しかないのになぜそんなに同時発音数が必要なのかは、サスティンペダルや開放弦の共鳴を考えればわかってもらえると思う。
他にも、内蔵曲や録音、リズムセクションなどのお楽しみ系機能、平均律以外のチューニングがP-45にはない。まあ、主目的には必要ないのだが。MIDIインプリメンテーションチャートを見ても、MIDI関係の設定(ローカルコントロール等)もPX-160の方が充実しているようだ。
ペダル
このように、機能面でPX-160に傾きつつあるのだが、頭を悩ませたのはペダルである。PX-160はハーフペダルに対応していないのである(サスティンが0 or 127)。一応、専用スタンドを購入すれば3本ペダル(ダンパーペダル、ソステヌートペダル、シフトペダル)が装着可能でハーフペダル(サスティン0 or 64 or 127)に対応可能である。一方、P-45は汎用ペダルでハーフペダルに対応している上、連続値(サスティン0–127)なのだ。それなのに、P-45に3本ペダルは対応していない。
つまり、機能はPX-160だけどキータッチは微妙にP-45の方が好みかもだし、ハーフペダルを考えればP-45の方がいいのでは?となったのである。
しかし、結局私はPX-160を選んだ。DTM用途では余程のことがない限りハーフペダルが必要になる場面はないし、電子ピアノ使用時の音源の表現力と3本ペダルの拡張性に賭けたのである。絶対3本ペダル買わないけどw(追い討ちをかけるように余談であるが、専用スタンドがないと3本ペダルは自立しないらしい。)
レビュー
Amazonレビューにフェルトの経年劣化という悪い噂があったので延長保証を付けて買った。
開梱
[2019/09/08] 画像を修正
でかい。
おお…(天板と鍵盤の前側面には保護フィルムが貼られています)
付属のサスティンペダル(しょぼい)。
USBケーブル(Type A-B)は付属しないので注意。
感想
鍵盤部
最優先の鍵盤部について。実は試奏時に気になっていた打鍵音の大きさ。新品のためか、それほど感じなかった。耳障りではないがポコポコ(底を打つ音)、カチャカチャ(ピアノの鍵盤には元の位置よりも上に持ち上げることができる「遊び」があるが、打鍵した鍵盤が戻るときにその部分で鳴る音)と音がする。
細かい話だが、鍵盤はわずかに前傾している。おそらく、筐体の高さを抑えるためだろう(鍵盤の作用点が上昇するスペースが必要なため)。
88鍵はやっぱいい。ピアノの難曲も問題なく弾ける。多少鍵盤の戻りは遅いかもしれない。象牙調の表面処理が施された鍵盤は、テカテカしたタイプと比べると滑りやすいと感じる人もいるだろう。
音源
音源についてはそれほど弾いていないので軽く受け取ってほしいのだが、「こんなもんでしょ」という印象。やはりスピーカーから鳴っているという感じは否めない。ただ、サンプリング音の音質、表現力は確かに高く、DTM音源とは一線を画す。ベロシティやダンパーペダルによる音の変化も感じ取れる。音量もかなりあり、ボリュームMAXはとても試せない。
ネットの情報によると音源はスタインウェイから収録しているらしい。実は、このこともPX-160の選択を後押しする一因となっていた。自社製品に縛られないという点で、楽器メーカーでないことが強みとなることもあるのだ。
ベロシティといえば、感度はMIDIキーボードとは比べ物にならない。繊細で、DAWでモニタすると真の意味で128段階出ている。しかも、MIDI録音してみて知ったことなのであるがHigh Resolution Velocity Prefixというコントロールチェンジに対応しており、ベロシティは2^14-128=16256の精度をもつ(とはいえ、ほとんどのDTM音源では意味はないだろう)。
ダンパーペダル
ちなみに、microKEY Airとともに使用していたダンパーペダルKorg DS-1Hは対応していなかった。
KORG ダンパーペダル 電子ピアノ用 DS-1H ハーフペダル対応
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おそらくDS-1Hがハーフペダル対応品のため。ジャックのリングの数が2つならばハーフペダル対応(PX-160ではたぶん使えない)というふうに見分けることができる。そのうちまともなものを買おうと思うが、付属品でも十分演奏はできた。正規オプションはこちら。
カシオ 電子ピアノ プリヴィアPX-160/150対応 サスティンペダル SP-20
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MIDIキーボード用途
さて、MIDIキーボードとして卓越したベロシティ感度をもつ本機であるが、そのダイナミックレンジの高さゆえDTMには不便なこともある。リラックスした状態で打鍵するとVel=64くらいなのだが、DTM的には100くらい欲しい。つまり、DTM音源を演奏するには音が小さいのだ。本体でもベロシティカーブを3段階(+固定)に調整できるものの、内蔵音源向けのためかタッチを軽くしてもあまり変わらなかった。Macの場合、ドライバはシステム標準のものを用いるため、ドライバ側で調整することもできない。この対策については、次の次くらいの記事で書こうと思う。