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音階—ドレミファソラシはどうやって出来たか—

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今日は、音階(ドレミファソラシ)がどのようにして生まれたかについて書こうと思う。

ある1音(今回は中央ド)の周波数を定義し*2、たった一つの原則から全ての音を導き出そう。

歴史的な成り立ちの経緯を無視し、天下り的に説明しているため、音楽を学ばれた方からはお叱りを受けるかもしれない。それでも、ドを出発して適当にそれっぽく説明すれば数字をこねくり回せば音階を生み出せることに面白さを感じてほしい。そういう思いからこういう導出をしていることにご理解いただきたい。

 

定義

中央ドの周波数を

264 Hz

とする。

 

たった一つの原則

複数の音の周波数の比が小さい整数の比で表せるとき、それらの音は協和*3している。

このことは、各音の倍音列に共通成分が多いことで説明できる。

 

音階の構成

この原則にしたがって、音階を構成していこう。

最も単純な整数比1:1は、明らかに同音である。

1:1 - ド

 

これではラチがあかないので、次の整数2にご登場いただく。周波数比1:2は、オクターブである。

1:2 - ド↑

 

不思議なことに人はドとド↑を共通した音と感じる。これにより、音階に螺旋階段のような周期性が生まれ、オクターブ内の音を規定するだけで音階は無限の広がりをもつこととなる。

次に、3をもってこよう。周波数比1:3は、残念ながらド↑のさらに上にある。そこで、オクターブの法則を使う。1:3は2:3 (1:1.5)と同音である。

2:3 - ソ

 

1:3はソ↑だったのだ。

3が終われば、次は4。周波数比1:4も2:4も、1:2と同音だ(それぞれド↑↑、ド↑)。

ところが、3:4は面白い。3:4 = 3:2x2である。この音はすでに登場している。どういうことかというと、ドをソと見たとき仮のドの音が考えられ(3:2)、その音は3:4の音を1オクターブ下げた音に相当する。3:4の音-仮のドの1オクターブ上ーは、ファである。

3:4 - ファ

 

そして、5のお出ましだ。周波数比1:5は、2オクターブ下げてみよう。4:5となり、これはミになる。

4:5 - ミ

 

ここまでで、ド、ミ、ファ、ソが生まれた。

数あそびはもう終わりにしよう。他の音たちはファのときと同様に、すでにこちらを見ている。ソをドと見たとき仮のソ(4:9)を1オクターブ下げればレ(8:9)、仮のミ(8:15)はシになる。ファをドと見たとき仮のミ(3:5)はラである。

8:9 - レ

8:15 - シ

3:5 - ラ

 

登場したすべての音(派生音(ファ#など)については決まった調律法がないため割愛させていただく)の周波数比と周波数をまとめておこう。

音階 周波数比 周波数
1:1 264 Hz
8:9 297 Hz
4:5 330 Hz
ファ 3:4 352 Hz
2:3 396 Hz
3:5 440 Hz
8:15 495 Hz

このとき、ドミソ、ファラド、ソシレの和音(いずれも周波数比4:5:6になっている)は非常によく協和して聞こえる。これらは主要三和音といって音楽的に重要な和音である。

ここで、気をよくして、レを基準とした音階(ニ長調)を構成してみよう。レに対してラを周波数比2:3で作る。ところが、先程の表を見るとナンテコッタイ、ドを基準とした音階(ハ長調)だと周波数比27:40になっている。とても小さい整数の比とはいえない。

つまり、ハ長調で調律したピアノはハ長調専用となり、ニ長調の曲を演奏するときは調律のし直しが必要となる。さらに、音楽では曲中で調が変わる(転調)ものも珍しくない。そういった曲は演奏不可能*4になる。

それぞれの調専用のピアノが必要になることを悪く思わない人もいるかもしれない。しかし、音楽的に同音程なド-ソ、レ-ラ、ミ-シ、ファ-ド、ソ-レ、ラ-ミのうちレ-ラだけが周波数比27:40であることについてどうお思いだろうか。

悲しいかな、完全な協和を目指したはずの音階にはどうしても不完全さが内在するのである。

 

平均律

先程の音階には2つの問題

  • 調性ごとに独立していること
  • 音程が一定にならないこと

があった。これは、和音を協和させようとするたった一つの原則によるものだった。

そこで、

えーい、めんどくさい。オクターブを(派生音も含めて)12等分してしまえ!

としてしまったものが平均律である。これに対して、先程の調律を純正律と呼ぶ。

 

オクターブ(周波数比1:2)の12等分とはどういうことだろうか。これは、各半音の周波数比を1:X, X12 = 2とすることと等しい。Xは、およそ1.06である。

さて、平均律での各音の周波数比と周波数をまとめてみよう。ただし、大人の事情*5により定義を「中央ドの周波数を261.63 Hzとする。」と微修正させていただく。

音階 周波数比 周波数
1:1 261.63 Hz
ド# 1:1.06 277.18 Hz
8:8.98 293.66 Hz
レ# 1:1.19 311.13 Hz
4:5.04 329.63 Hz
ファ 3:4.00 349.23 Hz
ファ# 1:1.41 370.00 Hz
2:3.00 392.00 Hz
ソ# 1:1.59 415.30 Hz
3:5.05 440.00 Hz
ラ# 1:1.78 466.16 Hz
8:15.10 493.88 Hz

純正律の周波数比と比べても、それほど悪くないという感想をお持ちではないだろうか。(先程、定義の変更を行ったため周波数を比べてはいけない。)
[追記]
数字で見ると「それほど悪くない」が、問題がある。完全5度のド-ソでも小数点以下第3位まで示すと周波数比2:2.997である。小さな差だが倍音間でうなりを生じ、平均律ではオクターブ以外完全に協和することはない。等分割するだけで純正律と近い周波数比が出てくることは興味深いが、周波数差が小さいほどうなりはゆっくりになるため耳につく。

実際、現在の多くの音楽ではこの平均律が使われている。ユニゾン、オクターブを除いては完全に協和することはないものの、ずれをすべての音程に分散させることでどこを基準に音階を構成しても必ず同じ周波数比になる。
[一部訂正]

これにより、1台のピアノでどの調も演奏できる。転調も自由になる。音程も等間隔になるのだ。

今日の音楽はこのようにして成り立っている。

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*1:画像提供 ソザイング

*2:親しみやすさを重視するため、音名で書くべきところもあえて階名で書こう

*3:互いにとけあって快く耳に響く。[追記]うなりのない

*4:少なくとも、快い響きでは

*5:A = 440 Hzに揃えるため